FC2ブログ

The Matter of Japan

 中国人と仕事をしている夢をみた。仕事はみんなでやる農作業のようなものだった。トラブルがあり、自分らしい人物が途方に暮れている。そこで目が覚めた。
 うつらうつらしながら、その夢の根拠と意味らしきものを、考えていた。前夜にみたテレビ番組からきたらしいと、その夢の出所はすぐに解けた。その番組はある日本のブランド力のあるアパレル会社が、自社株の四十%を中国人に買われ、中国人のボスの下に、日本人が使われる側となる悲喜劇をドキュメンタリーにしたものだ。
 「日本人は中国へこれまで培ってきたノウハウを提供して欲しいが、中国的な考え方に頭を変えてほしい」と日本人社員はボスから要請され、早期に中国全土に百社の販売店を展開することを目標として提示される。日本人は北京に一号店の開店からの拡大を考えるが、中国人のボスはその逆に、地方からの展開を考えている。日本人社員が愛着してきた会社のロゴはもとより、日本人が描いた店舗のイメージとはほど遠い、中国人のおおまかでざっくりした考え方と早いテンポと、日本人の仕事の進め方とのギャップに悩みながら、中国式経営方式に自分を適応させていく日本人の姿が映像化された番組であった。
私はこうしたM&Aが両国の経済社会環境を変えていくだろうということは、予期していたことなので特段の感想はなかった。しかし、一日本人として、このアパレルメーカー社員の足のすくわれ方には、なにか危ういという一抹の感慨を懐かざるえないものがあった。あまりにヤワな軸足の不安定さと軽さ、いますこしの抵抗や主張はないのであろうかという懸念である。
 過去に仕事関係で中国人と接触する機会は幾度かあり、彼等・彼女等と日本人との違いを納得し、それなりの対応をしてきた経験はあった。歴史と文化が違うのだから、それは当然なことだろう。また仕事以外に、中国語を勉強するサークルに参加したことがあった。
 人数は少なかったが、ほとんどの日本人は中国の女性の先生と中国語で話しあえる程にレベルの高いサークルで、初級レベル以下の者が次第に、仲間から浮かびかけているのを横目で観てきたのだ。
 中国の先生はともかく、中国語を学習する日本人の浅ましいまでに貪欲なエゴイズムと排他的な競争心は、前述の日本のアパレルメーカー社員の自信のなさと、表裏一体の関係にあると感じないわけにはいかなかったのだ。ここに日本人の原質があるように思われた。それをどう表現すればいいのか。14億人とも言われる中国市場はビジネスからは垂涎の的であろう。また、中国からの観光客に応接する商売には中国語の語学力は、求められて然るべき能力であろう。日本人のこうした時代の潮流にのる即応力はいいに違いない。それに問題があるわけではない。だがその背景を裏打ちするなにかが過剰に不足している。空気を読むその感度はいいに違いない。だが肝心の自国の立ち位置が曖昧模糊としている。少なくとも中国と日本の歴史的な背景、外交と言語の交流史についての関心と知識は、語学力の前提として必用なものに違いない。一般人に千年以上前の空海聖人を引き合いに出すのも憚れるが、空海の中国の唐へ渡る事前の準備は並大抵なものではなかった。仏教、特に密教についての熱い関心があればこそ、短年限での吸収が可能であった。旅行用の語学ならどうということではない。ただこれからの中国との交流はそんな程度では済まないはずであろう。技術だけではない、それを生みだし支える思想と哲学までが要求されるはずであるし、そうでなければとても対等な関係を結び合うことは無理ということだ。そうしたものが、残念なことに見事なほどに皆無なのであった。これは戦前も戦後も一貫して変わらない日本人の本性、逆説的に言わざるえないが、これが日本人のアイデンティティーなのであろう。その危うさを肌身で直感的に感じ取っていたのは、時代でいえば明治前期までであり、人物としては西郷隆盛や福沢諭吉や勝海舟や夏目漱石たちの、日本の文明開化の一大危機を乗り越えてきた先人等であるように思われる。
 そして、最後に付け加えねばならないのが、今時の大地震と原発事故の大惨事に対する日本国と日本人の思想の根本に立ち現れねばならない思想の姿なのだろうと思われる。永井荷風は「明治は遠くなりにけり」と墓誌に記したが、別次元の画期的に新しい「明治」がいまここから、始まらねばならない時にあるのだと考えないわけにはいかないのだ。




プロフィール

masuryuu

Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード