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歌仙「春の夕」

 縁ありて昔は粋な人がいた柳橋で、歌仙を巻く会にビルの一室に集うたことがあった。「断捨離」ではないが、そろそろ、いろいろと整理をすべき季節がきた最中、下記のような古い歌仙の栞がでてきたので、ここ筆写して残すことに興趣をみた。何時のことだが噸と記憶になかったが、おぼろな時の隙間風、2004年の3月27日の、微醺を帯びて数人の粋人が夕に寄り合い、巻いた一刻の名残である。


      歌仙「春の夕」


発句  春の夕そぞろ歩くは柳橋           ゆみ

脇     黒塀越しに匂う沈丁           丁那

第三  忘れ霜風炉の湯滾る音のして         利夫

四     へへのの眉の間のひろがる        たすけ

五   月人の舞いを見ている石の上         龍二

六     きやけき光きちきちがとぶ        照公



一   幼き手離して走る大文字           雅義

二     白粉焼をしたる母様           健吾

三   恋かしらムーランルージュの回りだし    丁那

四     フランス帰りコムシーコムサ         龍二

五   年金の掛け金未納大騒ぎ            利夫

六     世間知らずは通らない歳          ゆみ

七   寒月を仰ぎあえいで車引く          利美

八     厠の水の凍りつきたる           たすけ

九   もののけの悪戯過ぎて祓われて        利夫

十     なじみはじめたキューポラの町      丁那

十一  煙無くさびしき思い花を待つ           照公

十二    畳鰯をぱりぱりと割り           健吾


名残表

一   ひらひらと蝶々と僕と君と星         丁那

二     ジャクシーなんて泡が立つだけ       たすけ

三   ビールをば飲めばグルンと喉が鳴り       照公

四     機微にうときは下戸の悲しさ        利美

五   田の面をさざなみ立つる雨が降る        照公

六     妙に気取った車内放送           ゆみ

七   くっさめに間髪入れずティッシュ出し      利美

八     きぬぎぬというものの快楽         丁那

九   占いは気にしないのと彼女言い         ゆみ

十     屋根に芝生を植えてみようか        ゆみ

十一  摩天楼片頬を出す月の影             照公

十二    満願成就したる糸瓜忌           利夫

名残裏

一   二十二の秋に血を吐く子規           龍二

二     歯ブラシの立つ玻璃のコップに       丁那

三   振り出しに戻る定年新庁舎           利美

四     故郷の山の羊雲載せ            たすけ

五   さしみ買うことを忘れし花疲れ         雅義

挙句    天の邪句を朧おぼろに           龍二


10年一昔とはよく言ったものである。 

     無縁坂ハスの枯葉をみてくだる    龍二


 上の歌仙を巻くには、「連句・俳句・季語辞典」(三省堂)の編者の一人、佛渕健悟君のお世話になったことを謝して記す。

     仏らの降りくる 春の ひかりかな    健吾




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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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