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仙人掌の花

saboten.jpg

 玄関の鉢に小さなサボテンがありました。もうすぐ花が咲くらしく、芽が出ているのです。
近所に預けられている2歳の男の子が、このサボテンが大好きで、手をひかれて歩いて来ると、必ず様子を見ていました。そのサボテンに、”サボちゃん”という名前をつけたのは、その子でした。
 ―カーイイ、ねェ~、サボちゃん!
 と言って、しばらく眺めています。

 それから、しばらくすると、その小さな植木鉢の“サボちゃん”へ、
 ―バイ、バイ! と、あいさつをしてから、帰っていくのでした。

 “サボちゃん”は棘だらけの耳をたて、針のような細い眼をいっぱいに開いて、男の子を見ていました。
 いちど、お母さんに手をひかれたもう一つ上の男の子が、“サボちゃん”を見つけると、近づいて来て、
 ―お母さん、これ、なーに?
 と言って、“サボちゃん”の尖ったお鼻に、指でさわったことがありました。
 ―マーちゃん、さわっちゃいけません!
  お母さんは大声で叫びましたが、もう遅かったのです。
 ―痛い、痛い、お母さん、痛いよー!
 マーちゃんは、とても大きな声で泣きました。とても痛かったのにちがいありません。
 お母さんは、“サボちゃん”を、睨みつけて言いました。
 ―こんな小さいからだをして、まァ、なんて、いじわるな子でしょう! こんなハリネズミのような、からだをして、あなたなんて、スミレさんのような、きれいな花を咲かせるなんて、とてもムリなことね!
 こんな悪口を言って、泣いている男の子の手を引きずるようにして、立ち去って行きました。
 そのお母さんの恐い顔と、かなきり声に驚いて、”サボちゃん”は思わず身がちじむ思いでした。
 その夜、“サブちゃん”は、白い大きなお月さんを見上げて、お願いごとをしたのでした。
 お月さんは、尖ったマツゲの奥の、針のように細い瞳から、お星さまのような泪がキラリと光って落ちるのを見て、言いました。
 ―“サブちゃん”だいじょうぶですよ。あなたのあたまよりも大きくて、真っ白い花を、きっと咲かせてあげますからネ。
 それから、二晩が過ぎました。空が暗くなる頃でした。
 “サブちゃん”の耳の後ろから、お月さんがいったとおりの、大きくて真っ白な花が、長い、長い、茎をのばして咲いたのでした。



咲いたサボテン


    
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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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