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夢の女

 めずらしくも朝8時ちかくまで寝入った。私は喜ばしい夢をみていたのである。これまでの日々に数知れない女性を目にしてきた。その女性はそんな一人に過ぎなかろう。よく思いだすこともできない一女性が、その笑顔が私に好意以上のものを持ってくれていると知ったのだ。私のこころは、愛し愛されている歓び、その溢れるような幸福感に、欣喜雀躍のいたりであった。こころは清浄に洗われ、私の肉体も精神も若返り、生きていることに酔いしれるほどであったのだ。
 だがもう一度、私の見知らぬ神に、問うてみずにはいられない。一度とてそんな思いを懐いたこともない女性、私の記憶のなかでかほど私の幸福にしてくれると想像し、いや空想さえもしたことがない女性が、夢に現れその女性を思うだけで、もう胸がいっぱいになるなどということが、いったいあり得るものだろうかと。夢に現れてみて、初めて私は彼女の顔を、はっきりと思いだすことができたくらいなのである。
 だとすれば、私は無意識の一瞬に、彼女をみたその瞬間、無意識にその女性に恋をしていたことになるのではないのか。でなければ、その一女性が、あれほど鮮明に私のこころを掴むはずはないにちがいない。私はその人の名も知らず、思いだすこともないのに。ただ、すこし斜視なその目付き、その小さな面立ち、知性と品もありそうなその一女性のなんとも愛くるしい笑顔に、私は夢の中で儚い恋をしてしまったのである。ただ一瞬のうちに相愛の喜びにあふれる愛が、夢の中では可能なのであるにちがいない。
 私は春の夢にこころ安らぎ、深い喜びの笑まひにつつまれて、目をあけたのだ。
 夢の女に限りない感謝を捧げながら・・・・。私はこの幸福の夢を信じようと思う。
 あのロミオのように、あのジュリエットのように。




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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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