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原爆と原発

 「アメリカの極秘の国家計画『マンハッタン・プロジェクト』は、人類最初の原爆実験を、一九四五年七月十六日、ニューメキシコ州の砂漠で行った。そのとき、『ドン!』の爆発音はなく、ただ『ピカアアアアッ!』と光っただけである。これは日本へ落とされた二発の核兵器のうち、長崎と同型であり『プルトニウム239』の放射能物質が使用されたからである。これが核開発の本流であって、『ウラン235』の放射性物質を使って広島へ落下されたものは、兵器としての威力はプルトニウムに較べて弱く、設計が単純で非効率のため、核開発の専門家は広島に落とすまえからこれを見限っていたらしい。従って、実験もしていなかった。
 これに比較し、ウラン235は唯一自然界でとれる核分裂物質で、鉱山から掘り出せる原爆の原料となりうるものは、このウラン235のみであり、核開発はすべてプルトニウムが中心なのだ。ただこのウラン鉱石の欠陥は、ウラン鉱石は99%以上が、核分裂しないウラン238でできているため、そのままでは使えないことにある。
 そのため、238を捨てて235を残す『ウラン濃縮』作業が必要となる。このには厖大な予算をかけた巨大な施設が不可欠であった。ところが、ウラン235とウラン238を使えば、自然界に存在しないプルトニウム239を人工的に作れることが分かった。これはウラン235が核分裂を起こす時、中性子が飛び出し、それがウラン238の核に当たると、分裂しない代わりに、ウラン238がプルとニウム239に変身するのだ。この化け物はウラン235よりもっと凄まじい核分裂を起こすのだが、問題はウランを爆発しないとこれを手中にすることはできない。そして、爆発では広範囲に散って集めることはできない難点があった。どうしたら爆発をともなわない原爆で、威力ある原爆の原料を量産することができるか。それが『マンハッタン・プロジェクト』の最大の課題だったのである。  
この課題に答えたのが、爆発ぬきの『原子爆弾』として開発された原子炉という装置であった。
 一九四二年に秘密に作られ、ウランの核分裂によるプルトニウムの原料を使った『原子爆弾』が使われたのが、ニューメキシコ州の砂漠の七月十六日と長崎の八月九日で、これが核兵器の代表格が使用された二つの場所だった。
 のちにこの原子炉が、『発電機』と偽装されて売り込まれ、アメリカ合衆国に百基、日本列島に五十基以上が作られた。こうして、プルトニウム作りが継続された。
 広島と長崎とは、厳密には区別されなければならないのだ。」
  
 以上は、上野広小路へ鰻重を食べに行ったときに目にした「うえの」というタウン誌に、アーサー・ビナードという詩人が書いたものの紹介文に過ぎない。なおこの詩人は、2001年、詩集「釣り上げては」(思潮社)で中原中也賞受賞している。

ところで、第二次大戦中の米国の原爆開発・製造計画をさらに、詳細に敷衍しておけば、1938年暮のドイツにおけるウランの核分裂発見を契機に、米国内各地の大学や研究所でも核分裂に関連する研究が一斉に開始された。1939年秋に第二次世界大戦が始まると、ドイツで原爆研究が開始されているという情報がもたらされ、ドイツが先に原爆を手にすれば世界がファシズムに制されるとの危機感が高まり、こうした危機感を背景に米国でも原爆研究が始まり、1942年9月には本格的な国家軍事プロジェクト、すなわち前述した「マンハッタン計画」(Manhattan Project)へと発展していったわけである。その後原爆開発は急速に進み、巨大なウラン濃縮工場がテネシー州オークリッジに、またプルトニウム生産用の原子炉と化学分離工場がワシントン州ハンフォードに建設された。これらの巨大施設は1944年秋から翌年春にかけて次々と完成し、原爆の原料となる高濃縮ウランやプルトニウムの生産を開始したのである。
 一方、原爆の設計開発と製造は、ニューメキシコ州のロスアラモス研究所で進められた。1945年7月16日にプルトニウムを原料とする最初の原爆が完成し、ロスアラモスから南に約300km離れた砂漠の地アラモゴードで人類初の核実験が行われた。こうして1945年8月6日に高濃縮ウランを用いた原爆リトルボーイが広島に、またその3日後の8月9日にはプルトニウムを用いた原爆ファットマンが長崎に投下されたのである。
 前半と後半では、記述に重複する部分はあるが、原子炉についてのおおよその知見を知ることができようかと、敢えて掲載させてもらった。
 なお、核兵器時代における想像力を鍛えるには、惜しくもノーベル文学賞を逸して他界した作家の安部公房の「死に急ぐ鯨たち」(新潮社一九八六年発刊)なるエッセイを参考にされんことをお奨めしたい。
 


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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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