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歴史と未来

 ー過去の歴史を支配するものは、未来も支配する。
日本は先の戦争に敗れてから、自国の歴史を盗まれてしまった。歴史を失った国となった。今日、日本国民の多くが、先の対米戦争が日本が仕掛けた無謀な戦争だったと、信じこまされている。だか、事実はまったく違う。アメリカは日本が真珠湾を攻撃するかなり前から、日本と戦って、日本を屈服させ、日本を無力化することを決定していた。・・・・日本政府と軍部は、その直前まで、日米戦争を回避しようとして、真剣に努力していた。・・・・日本は罠に仕掛けられたのだった。ルーズベルト政権による陰謀にはめられ、断崖絶壁まで追い詰められて、やむにやまれずに開戦に踏み切ったのだった。
 右の一文は、この本の「第一章ルーズベルトが敷いた開戦へのレール」の冒頭である。
 この新書版の本は、「日米の記録を用いて、日米開戦にいたるまで、東京とワシントンにおいて何が起こっていたのか、時系列的に対比したものある。歴史を公平に検証すれば、どちらが仕掛けた戦争だったかが明らかになる。」と裏表紙に、書かれた動機が明記されている。
 たしかに幾つかのことがらは、既にテレビ等の報道により、そうだったのだろうかと知らされていたものだ。この本はさらに幾つかの事実があったことを検証している。例えば、開戦の年の五月には、アメリカは日本の暗号の解読に成功して、早期の段階で日本の政府や軍部の連絡内容を把握していたこと。これは戦うまえから日本は手の内を相手国に知られていたことになる。「戦争論」を書いたクラウゼウッツは、戦争は外交の延長だと言っていたが、これでは日本の政治の動静はつつぬけに外部に漏れていたことになる。今もそうだが日本は国家機密を守るに甘いと言われている。東京はスパイの天国らしいのだ。
 さらに、米英が東アジアにおける日本の勢力を殺ぐことに共同歩調をとることを裏で合意していたこと。石油の輸送ルートを断つ経済制裁を推し進めていたこと。ロシアの参戦や中国の反日勢力への後押し等、アメリカは日本の専政攻撃を画策していたこと。これらの検証がいかなる資料と証拠によるものか、いま少しの疑問は残るが、この本にその明記はなく、すべて断言されていることだ。一方、当時の日本政府の要人たちは、天皇から度々勝機を問われながら、二年ほどは持つがそれ以降は分からないと応答している。戦端を開くのは簡単だが、戦況をみてそれをどう納めるかの判断のないままに、真珠湾を攻撃すればその先がどうなるかは自明なことであっただろう。
 著者たちが強調するアジアの被植民地国が、先の大戦を奇貨にして次々と独立を遂げられたことに、日本が敗戦したとはいえ、結果として無謀な戦争を遂行した意味を見出している。その無謀な戦争が仮に、アメリカの罠にはまったのだとしてもである・・・・。
 歴史では「もし」は禁句だろうが、もし朝鮮半島が日本が統治し続けることができていたとしたら、三十八度線で分断されることはなかったという仮定法に、おやおやと思うものがいるかも知れない。たしかに、東京裁判で暖用された「平和に対する罪」は、国際法にはなかったものだろう。
 いづれにしても、日本の敗戦という既成事実がある以上、また、それから六十数年を経た現在に、日本が周到に準備したアメリカの罠にはまったことを、どんなに検証してみたところで、過去から現在へとつづく事実は変えることはできない。ハル・ノートに驚愕した段階で、日本の平和を模索する外交努力は水泡に帰するしかなかったのだろう。アメリカへの開戦布告が手間取り、アメリカを騙し討ち(スネイク・アタック)と怒らした不手際は、決して小さな過ちではなく、こうした不手際の累積されたものが、例えそれが罠だとしても、長期的な外交戦略と緻密な諜報活動において、日本が国際的に敗戦国たらざるえない背景となったのにちがいないだろう。
 問題はこれからの未来の展望において、ますます複雑な地政学的な位置にある日本が、どのような戦略を練り、内外の政治状況をコントロールしていくかにかかっているのではないか。
 先日、偶々に私は「地図で読む世界情勢」なる上下二巻の本を読んだ。フランス人の手になるこの本は、幾通りかの地図の作製方法を駆使して、現下の世界情勢をコンパクトにまとめたもので、初歩の政治家には必須な文献になると思われたものだ。ここに中国の石油輸送の基地が東アジアからインドまで、首飾りのように設立されている地図を見せられ、アフリカに進出する中国の経済規模のグラフを見た。だがこの本に占める日本の分量は殆どないも同然の扱いに、私は驚いてしまった。「ル・モンド」の記事としても日本の扱いは、弱いものになっていると仄聞したこともある。
 福島の大惨事からの復興を含め、今後の日本の舵取りは困難を極めるであろうことは、火を見ることよりも明瞭なことだろう。過去の歴史から学ぶべきことは学び、政治、経済、科学等、日本がどんな道を歩んでいくのか。
 先日、戦時にアメリカへ移民した日本人が、強制収容所の生活で作り出した諸々の作品をテレビで見ることができた。脱走して殺された者も精神を病んで自殺した者もいたようだが、自由を奪われた収容所の日本人が創造した、椅子やらテーブル、杖やら動物の置物等には、感心させられたものだ。テレビの題名は「GAMANの芸術 戦時下に刻まれた不屈の魂」とあった。かたや日本の政治的な空白は長期にわたっているのである。



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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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