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株式入門

 亡くなった母から聞いた話しだが、遠い親戚に株の売買でお屋敷を築いて一財産家になった夫婦がいたらしい。四六時中、寝ないでラジオにかじりつき、天候にまで注意を向けて、大変な努力をしていたということだった。時々母が話すこうした話題は、子供ながら興味をもって聞いたが、それ以外は批判と愚痴ぐらいしか、あまり覚えていない。
 青年時代に感化されたフランスの詩人にして哲学者のポール・ヴァレリーは、青年期に書いた「テスト氏」の肖像に株取引をしている人物を素描している。これは推測だが、金利生活者の希望を書簡で洩らしたランボーからの示唆に加えて、なかなか世界情勢に明るいヴァレリーが後年、友達の紹介かで社長秘書になる素地が示されていて興味深い。
 この「テスト氏」の中で「金は社会の精神である」と語ったヴァレリーに感化され、ほんの一時、銀行員になった私の委細は、以前に述べたところだが、昨年末から私も株式市場にちょっぴり手を染めてみた。また、今年に入ってひょんなことから、数人の投資クラブなるものにも参加することになった。別に「経済小説」を書きたいと思ったわけではない。すこしばかり、社会を覗きこみたいという助平根性が働いたに過ぎない。
 開高健の「巨人と玩具」は既読だが、あらたに城山三郎の「輸出」を読んでみた。これが面白いのは、会社という組織とそこに生きる会社員達の人間模様が、うまく描けているからだ。この小説は高度経済成長期の日本の時代背景を抜きには語れない。
 昨年11月に発足した安倍政権は、デフレからの脱却を最優先の課題とし、日銀総裁の人事にこれに最適な人物を据えた。低迷する日本経済は今後どう動くのか。取り敢えず、米欧との為替は円安となり、株価も軒並みに上がりだしている。こうした社会の動向を視野に持たない隠遁的な生き方をするのもいいだろう。
 平安末期の鴨長明の「方丈記」でさえ天変地異には無関心ではいられず、わざわざ現場に足を運んでその様子を生々しく描写し世の無常を強調しているくらいだ。わずか原稿用紙30枚弱のエッセイだが、カタカナ書きなのも心憎い。
 このブログを書いている間に、株価が上がってほんのちょっとの利益を得た。嬉しくないことはないが、現在進行形のマーケットの株価情報はどこまで信用していいものか。一株が昨年の12月では30万弱の銘柄が、昨日はなんと約2倍程の値上がりしている例がある。こんな値動きの激しいものは買う気にならない。たぶん海外の外人の機関投資家が動いているのだろう。会社を裏返すと社会となり、その社会の一端を知るには、株式はリスクはあるが面白い道具だ。経済学が歴史に登場したのはそんなに古いことではない。なかなかの投資通だったケインズは株式を美人投票に喩えたという。
 ところで「方丈記」は長明が58歳ぐらいの頃に書かれ62歳で没している。平安から鎌倉へ移行する歴史の転換期だった。

  古都はすでに荒れて、新都はいまだ成らず。ありとしある人は皆浮雲の思いをなせり。

 こうした転換期にしか歴史はそのほうとうの姿をみせないらしい。さて、この北東アジアで戦火をみるか。列島に多く走る活断層が動きはじめて想像だにしない大地震に見舞われるのか。そうした妄想から離れて、一人古典でも読んで、余生を静かに送るべきなのであろうか。なかなかにその判断が難しいのがこの世の中というものらしい。



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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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