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日本経済の象徴

 もう残りも少ない晩年になって、こんな本に関わりあっている自分がどうにも厭だと思いながらも、一冊の経済書をよんだ。「金利・為替・株価」の副題をもつ植草一秀の「大躍動」という本だ。
 おそらく株なんかに手を出さなければ、全然、関心をいだかなかったにちがいない。一昨年の暑い最中に、幾度か訪問をうけた証券会社の新入社員にふと同情したばかりに、とんでもない世界に迷い込んだのだ。この青年が売り込んできたのは、「投資信託」だった。すくない年金とは別に、少額で小銭を毎月に分配金としてもらえるという売りことばに誘われたのである。自分の息子とほぼ同年齢の青年のうぶなセールスに、苛々しながらもそのうちの幾つかの商品を約定した。まあ青年と一緒に、社会勉強でもしようと思ったのだ。
 植草の本はその筋の本では、現在の経済と政治の裏話を含め、その世界の方向をコンパクトにまとめてあった。とくに、玄人には退屈なのであろうが、第三章「金融市場を読み解く極意」あたりから、おもしろくよめるようだ。株価の変動要因として、企業利益の成長率、長期金利、投資家の株式投資のスタンスの三つを変数としていることは、常識なのであろうが、「08年以降、日経平均は円ユーロレートに連動している」とか、「財政危機で国債価格が暴落するというデマ」(著者によると、なんとしても消費税増税を実現したい財務省のキャンペーンらしく、日本の名目のGDPは500兆円を下回っており、この二倍の1000兆円を越す長期債務残高の規模は世界最悪であり、日本の財政が深刻な危機に直面しているというのはウソであり、財務状況は借金の規模だけで決まるものではない。資産と負債のバランスシートのチェックから判断されるべきで、内閣府の国民経済計算統計では、2010年12月時点で資産1073兆円、負債が1037兆円でわずかではあるが資産超過の状態だという)、そして、安倍政権の円安進行で2013年後半に、あくまで短期的にではあるがミニバブルが生まれる可能性があるというのだ。ただ2つのリスクがある。一つは2014,2015年の日本版「財政の壁」問題で、いま一つが日銀の独立性の毀損問題の副作用だ。つまり消費税5%引き上げを株価が織り込みだす可能性と、日銀を政府が上から支配する代償が小さくないとの読みである。つぎに「資金余剰=経常収支黒字国で財政危機は生じない」「消費税増税廃案で債権急落という日経の誤報」から、「2012年の転換点をどうよみ抜いたか」では、2003年4月以前の株価変動、即ち、1990年初から1992年8月にかけて、1996年6月4から1998年10月、2000年4月から2003年4月にかけてと、3度の暴落は1990年初から始まるバブル崩壊から23年の間、日本経済は全く成長を遂げていない。著者はこれを「失われた90年代」と呼んだが、それ以降も経済の低迷はつづき、ついに「失われた20年」も過ぎてしまった。25年間の日本経済の足どりをグラフに示し、4度の株価暴落と4度の株価反騰の経験をして現在(2013年)に至っているという。株価の変動は経済全体の動きを象徴しており、この25年間の全体から、大局を掴むことの必要性を説いている。
 そして、第4章に株で勝つ極意を説いているが、これらは初心者が学ぶ常識だろう。だがこの常識を冷静に保つことがなかなか難しいのが株取引の世界だとは、誰もがご存じのことにちがいないが、簡単に列挙すると、はじめの一歩で躓かないために、「売られ過ぎの局面で買いに入る」こと。つぎに「負けぬこと」が肝心で、それには相場の法則性、相場のリズムを読めということで、このツールとして「ストキャスティクス」と「RSI]の分析ツールをもちいて相場の陰と陽の極を推量することだという。つぎに、「投資のタイムスパンを明確にせよ」ということだ。つぎに、「流れに逆らうな」ということだ。それには金融経済変動の歴史を頭に入れることだ。つぎに、「理の法則に従え」として、株価の理論価格であるPERに注目すべきだと。五番目が「ポートフォリオの構築」だ。六番目が「なくて七くせを掌握せよ」ということだ。これは個別銘柄の性格に注目せよということ。七番目が「損切り千両・利食い千人力」で、損失を最小限に抑制し、利益をこまめに積み上げることだ。
 最後に、「2013年度を読み抜く極意」であるが、「インフレ誘導政策がはらむ巨大なリスク」と「無視される歴史の教訓」として、
1.物価の問題と景気の問題の混同 
2.日銀の独立性の排除 
3.財政政策の中身が利権支出に回帰していること、だというのだ。
 だがもう、このへんにして、こうした本ともおさらばしようと思う。
 私は「不動智神妙録」(沢庵和尚)でも読んで、無心の境地で剣の道に入っていきたいのだ。
 




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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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