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石油という戦略物資

 第二次世界大戦の同盟国であったドイツと日本は、石油という戦略物資の欠乏から敗戦国となったと言っても過言ではないであろう。この石油という物資を介して世界を見ると、注目すべき図式が浮かび上がる。例えば、外務省の政府開発援助ODAのホームページをのぞくと、下記のような文言に目が惹かれる。
「パレスチナへのODA実施総額(ローンは除く)は年間約5億ドル平均で推移している。援助主体別では、日本と米国が双へきであり、両国共これまでの援助実施額は約3.2億ドルとなっている」
 何故かと考えると、「中東の平和」というキーワードが連想されるだろう。
1993年9月、パレスチナ暫定自治合意に関する原則合意宣言が、PLOとイスラエルの双方で署名された。これで長い間の紛争の当事者は和解に向けて動きだすと思いきや、現実はそう簡単に行かなかったことは周知のことだ。では何故いわゆるパレスチナ問題と言われる国際問題が生まれてしまったのか。そもそも、この地域をパレスチナと呼んだのは、この地域を16世紀から400年あまり支配していたイスラム教のオスマン帝国であった。このオスマン帝国は第一次世界大戦が始まると、イギリス、フランス、ロシアと対立する。この時にイギリスがいかなる権謀術策を弄したか。映画「アラビアのロレンス」では、ロレンスの背後で動く老政治家にそれは象徴されるだろう。ロレンスの知らないところで、イギリスは互いに矛盾する二股外交を展開するがこの首謀者があのチャーチル(彼はシェイクスピアの愛読者であった)なのである。まず、イギリスはアラブ人に対して「イギリス軍に協力するなら君たちの国家をつくるのに協力するよ」と持ちかけ(フセイン・マクマホン協定、1915年)、一方ではユダヤ人の金融資本家(ロスチャイルド)から戦費資金の提供を受けるために「お金だしてくれるならユダヤ人の国家を作るのに協力しますよ」と外交工作をする(バルフォア宣言、1917年)。イギリスはアラブ人とユダヤ人の双方にパレスチナでの国家建設を約束したのだ。
 イギリスの目論見は、アラブ諸国からトルコの支配を除き、かつドイツとオーストリアの脅威を殺ぎ、ジブラルタル海峡-マルタ島-キプロス島-スエズ運河-アデンという大英帝国の生命線を確保することにあった。そのためには、アラブ諸国が統一されることを恐れていた。事態はイギリスの思惑通りに展開する。これがパレスチナ問題として中東の火種となり現在に至るのだが、時の海軍相チャーチルの視線の先にあったのはイランの良質な油田であった。石炭から石油の転換を彼は欲していたからである。さらにイスラエルが建国された土地は、地中海に面しヨーロッパに近い北アフリカアラブの中間に位置している、しかもそこにはエルサレムというイスラム教の世界三大聖地の一つがあることは見逃せない。分断統治はいまでも外交の要諦で、アラブ諸国は互いに反目しあうようになる。となれば兵器を買うためにアラブ諸国が売れるのは石油の利権で、かくしてその後、アメリカがサウジを、フランスはイラクを押さえにかかる。だがやがて、アラブ諸国側から勝手に原油価格が決められていることへの不満が吹き出てくる。1960年、産油国は欧米石油メジャーに対抗してOPEC(石油輸出国機構)を組織することになる。だがこの機構が原油価格を差配できたのは、1970年代初頭の二度にわたる石油ショックまでで、原油価格がニューヨークのWTIの先物取引市場に取り込まれるや、世界金融の動向に左右されるようになるのだ。2014年11月、OPCの総会でサウジアラビアは「減産を行わない」と声明をだし、原油価格の暴落に対し原油価格の値上げに同意しなかった。それも原油産出のコストが一番高いサウジアラビアなのにも関わらずである。金融のグローバル市場において、戦略物資の石油でさえその投機対象となったのである。
 昨日8月22日の夕刊に、「NY原油下落 一時40ドル割れ」という記事が載っていた。こらから以降、同じように原油が下落傾向を続けるかどうかは誰にも分からない。しかし、世界第二位の石油消費国の中国が石油を確保するため、アフリカや中南米を取り込もうと外交を展開し、キューバとアメリカが急接近したのも石油が関連しているという。何故ならキューバ周辺の海底には原油が眠っているらしいからである。
 尖閣諸島の帰属でぎゃくしゃくしている日本と中国の関係もやはりこの海域にあるらしい石油資源が見えないが大きな要因となっている。安倍政権の安保関連法案への性急な動きも、石油の100%を輸入に頼っている日本がその輸送ルートの確保に懸念材料があるからであろう。日本としては危険なホルムズ海峡を避け、イラク、クウェート、サウジ、カタール、アラブ首長国連邦からオマーンへ直線のパイプラインを築ければという構想もあるだろう。さらに、アメリカのシェールガスが石油にとって変われるかというと、採掘コストが高くいまのところ石油には叶わない。ここで話題をひろげてアメリカとロシアの天然ガスがらみで、ウクライナ問題を取り上げてもいいのだが、むしろその背後にあるイスラム文明とキリスト教文明の衝突と見ると、アメリカ合衆国の政治学者サミュエル・P・ハンティントンが1996年に著した国際政治学の著作「文明の衝突」が浮かび上がる。つまり、冷戦が終わった現代世界においては、文明と文明との衝突が対立の主要な軸であると述べた。特に文明と文明が接する断層線(フオルト・ライン)での紛争が激化しやすいと指摘したのだが、エマニュエル・トッドはこれを大きな妄想だと批判している。
 いずれにしても、石油はいまも世界中の戦略物資の性格を変えてはいないことだけは確かなようだ。



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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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