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「崩れゆく世界」副島隆彦VS佐藤優

 この二人の対談本は今回を含めて3回あったらしい。佐藤氏は知らない人はいないだろう。毎月少なくとも一冊の本を出している、元外務相の主任分析官であり、世界の情報活動に長けて、そうした知力では斯界を圧倒している。副島氏は佐藤氏によれば、預言者だそうで、リーマン・ブラザースという固有名詞を上げて、アメリカの金融危機をいち早く預言し、アメリカに黒人大統領の出現することをも予測していたという。私が副島氏を知ったのは、90年代にちくま新書ででた「英文法の謎を解く」の三冊の本からであった。その後、古本屋でふと見かけた「現代アメリカ政治思想の大研究」の割と厚い本を買い、アメリカ内部の政治・経済関係のネットワークの構図を披露しているのに、一驚したことがあってからで、「裁判の秘密」(共著)や「属国・日本論」などを通読したことがあった。
 今回の「崩れゆく世界」は題名(副題には「生き延びる知恵」とある)の通り、「安倍政権」「イスラム国」「ウクライナ政変」「オバマとヒラリー」「日本経済」を、二人が縦横に論じて、なかなか壮観であった。
少なくとも、巷で繰り広げられている「床屋政談」などとは比べようもない、高度な分析と仔細な情報が開陳されて、得るところがあったのだ。対談本というものは対談者の呼吸が合っていないと、面白くはならないものであるが、今回のものは二人が青年時代に吸収した思想・哲学と政治活動にまで話しが及んでいて、それが単なる世界情勢のトピックを語るだけに終わらない、二人の背景まで見えてくるものになっている。中にはそうとう目の粗い議論もありそうだが、耳にいれておいても参考になれこそ損はしないにちがいない。例えば、「日本人のイスラム研究は大川周明が出発点」は、「極東軍事裁判」では思考力停止で免訴になった大川周明が記した「回教概論」にまで言及されている。また、「ウクライナ政変」では佐藤氏の情報と知見が、大国ロシアと回廊国家ウクライナの命運をあぶり出していて参考になったところだ。そして、ピケティの「21世紀の資本」とマルクス、ジャンジャク・ルソーとケインズ経済学など、話題はひろがり独自の見解が披瀝されている。
 ジャーナリズムとメディアは口当たりのよい意見とその場かぎりの角のない人物が幅を利かしている世界らしいが、修羅場を生き抜いた変人・異人等の、深謀遠慮のない砂混じりの風に吹かれてみるのも、また一興であろう。



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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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