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千人風呂

 今年の春から、3回も金沢へ行った。一度は女房のツアーに同行、二度目は知人に紹介した旅館の下見がてら、三度目が昨日帰ってきた「秘湯の温泉」だ。それぞれ異なる特徴があり良かったのは当然だが、今回は体調がすぐれなかったのに、日本晴れの空と旅館の窓からの山肌の色合いがなんとも結構で、それを眺めながら一人で露天風呂に漬かった。その苔むした桶の円かな湯船、地味な旅館だが落ち着いた佇まいが気に入った。それにすぐ近くに滝の水音が聞こえる足湯でくつろいで、多少は健康に幸いしたようである。
  持っていった本は「英国の青年」という吉田健一の文庫本が一冊。これを読むと、英国という国の伝統文化が昔から変わらずにあるのに対し、日本の場合は明治維新でそれまでの伝統文化を断絶せざるを得なかったことの無念さを著者は慨嘆しているようだ。
 それを言うなら、先の敗戦まで説くべきところだろうが、短いエッセイではそれは無理にちがいない。ある本によると、父の吉田茂はミッドウエイ海戦で日本側が大敗北を喫した四日後に、講話を模索したようである。もし、これが成功していれば、大正時代に生まれた人口の半分は生き残り、沖縄が軍事基地となることもなく、国土もこれほど毀損せず国体は護持され、なによりも伝統文化のかくまでの断絶を経験せずに済んだであろうとあった。もちろんのこと、「もしも」のはなしであるのだが・・・・。
  机上に二冊の本がある。加藤典洋の「戦後入門」と内田樹の「街場の戦争論」だが、後者の最良の読みどころは、後半の武道における「師弟論」にあるようだ。
 だがこんな話題はもうどうでも宜しい。せっかく温泉で心身をほぐしてきたのであるから、ほんわかとした噺にしたい。旅館の一階にある風呂場でつぎのような「千人風呂」という山頭火の戯れ句をみてニタリとしてしまったのだ。


ちんぽこも
おそそも湧いて
あふれる湯


 これはほんとうに、種田山頭火の句なのであろうか、ふとそんな疑問も湧いたのだが、あの酒飲みの托鉢の漂白歌人である。分厚い眼鏡のそこからこんな戯れ句がでたとしてもおかしくはないだろう。丸谷才一の小説「横しぐれ」に山頭火の俳句が顔をだすが、私は推理小説めいたこの本を、幾度も再読したい誘惑にときおり駆られることがある。

    うしろ姿のしぐれてゆくか

 こういう山頭火の自由律俳句が好きである。
丸谷氏の「文章読本」もこの人ならではの癖のある本だが、蘊蓄のある丸谷氏なら大和ことばにどんな反応を示すであろう。
 というのは、このあいだ新聞に大和ことばのクイズ、たとえば、「あさなゆうな」等のことばの知識を試す質問を見かけたことがあったからだ。四問あったがすらすらと回答をしたのは家人であった。やはり女性のほうが大和ことばに近いところにいるのもしれない。    
これには、ほんまに、「びっくりポン」や。



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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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