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京 都

 京都へ行った。娘の孫に逢いたいからである。生まれたのがパリで父親の転勤で日本へきた。フランスの祖母から《小さなエスカルゴ》とよばれたのは鼻水と涎をよく垂らしているかららしい。その孫と遊べたのは半日すこしだった。自分のことになるが、むかし亡父が最初の娘を実家に連れて行くと、そっと見ているだけで抱き上げようとしないのが不思議だった。だがその理由がなんとなく判ったのだ。父は娘を抱き上げたいのだが、泣かれるのがこわかったのにちがいない。抱こうとすれば一歳の娘は馴れない父の腕の中で大泣きをするにちがいなかった。年子となる次女の出産で実家に預けられていた長女は 母から離されて添い寝していた私の胸に母を求めてきた。その手でくすぐったい思いをしたことをかすかに覚えている。そんな案配であったから父はそっと離れて見ているしかなかったのだ。パリではまだしゃべらなかった孫はこの日本へきてしゃべりはじめた。娘が教えた日本語の「お父さん」が「トッタン」と発音されているらしい。この「トッタン」の椅子に私が座るとおこるのである。フランスでは親と子は家庭では別個に暮らす。日本のように親子がべとべととくっついて育てないのだ。子供は自分の部屋を与えられる。そうやって独立心を養う一方、両親は大人としての生活をする。孫の部屋へ私が勝ってに入ったのをみてすぐに私は追い出された。自分の許可のない入室が気に入らなかったらしい。当初は警戒気味の孫はしだいに私を受け入れだしたが、もうその頃には別れねばならないのだ。この孫にはこれからの世界のどんな未来が待っているのだろうか。
 私は家人とタクシーを利用して、ひさしぶりの京都を散策した。ホテルから下京区にある河井寛次郎記念館へ行ったが、これで二度目となる。静かな路地裏にある玄関から中へ入った。どことなく荒み古びてしまっている。上がり窯も崩れそうで記念館というものの維持がいかに大変なことかを思った。日本人より外人の訪問者が多い。そこから二条城へ行き神泉苑をそぞろ歩いた。ここも二度目か。つぎに三条大橋へ行き あの「池田屋」の跡地を訪れた。もちろん「池田屋」はなくビルの商店になっていた。むかいの甘味処に入ると「池田屋」の二階の窓辺に、新選組の武士像が現代風のタッチで描かれた大きな絵がみえた。三条大橋の欄干の擬宝珠に残る刀の傷跡が当時の斬り合いの凄まじさをいまに伝えている。そこから芹沢鴨が暗殺された壬生寺の「八木家」へ。文久3年9月18日どしゃ降りの深夜、芹沢鴨(水戸藩浪士 新選組初代筆頭局長)は新選組の土方、沖田等数名に惨殺された。これが新撰組三大内部抗争の一つであった。芹沢鴨や新撰組関連の墓を一同に集めた壬生塚に入る。ここには三橋美智也が歌った「ああ 新撰組」の歌碑があり百円を機器に投じると三橋の歌を聴くことができる。

加茂の河原に 千鳥が騒ぐ
またも血の雨 涙雨
武士のいう名に 生命をかけて
新撰組は 今日も行く

恋も情けも矢弾に捨てて
軍かさねる 鳥羽伏見
ともに白刃を 淋しくかざし
新撰組は 月に泣く

菊のかおりに 葵が枯れる
枯れて散る散る 風の中
変わる時勢に背中を向けて
新撰組よ 何処へ行く

 三橋美智也の高細い声には、濁りのない哀調がある。日本人が新撰組を好きなわけがなんとなく分かる気がした。新撰組は日本の歴史の一齣を為したが、この浪士の群像には日本近代の陰影が映しだされているのかもしれない・・・・。
 それから四条の南座へ行った。現在改築中とのことだが、近代建築に桃山風の意匠を取り込んだ建物は、ここ四条で出雲お国が始めた歌舞伎発祥の地に400年もあると思うとさすが京都だとの感慨がわく。近くにお国が踊る姿の銅像があった。池波正太郎はここで松竹の脚本を書いていたと池波が昔を懐古した本で読んだことがあった。先斗町をそぞろ歩いているとむかしが思い出された。いまも高瀬川が流れている。森鴎外はこの川を舞台に安楽死を扱った小説を書いている。越後藩の本田清一郎が岡田以蔵等に襲われ殺害された現場跡を見つけることができた。京都の改造に貢献した角倉了以の記念碑も近くにある。高瀬川を見下ろすうどん屋で一杯やる頃は、和服姿の夜の女たちがちらほらと姿を現す。ここにも外人さんを多く見かける。
 タクシーでホテルへ帰って休憩後、娘の住むマンションへ行く。少時孫と遊んでいると「トッタン」が会社から帰ってきた。夕食は娘が私たち夫婦を鴨川の安政3年創業の「下鴨茶寮」に招待してくれた。静かな庭は緑の立木に蔽われ由緒ある料亭のテーブルに懐石料理が一品づつ運ばれてきた。菊正宗の酒も旨かった。庭で記念の写真を撮って貰う。
  娘夫婦がパリに住みそのパリからUターンして京都に住むなんてことは考えもしないことであった。そこに可愛い孫がいるなんて。この人生はなかなか、おもろいところがあるものだ。



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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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