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クラノスケ(内蔵助)が、来る!

 今日はクリスマス・イブ。明日は、ついにプレゼントが来るのだ。猫の内蔵助君がくる日なのである。不安とわくわくする気分が半々。思えばとおく来たもんだ。小学校で黒猫を飼っていた。金色の眼をしたシャノワールだった。あいつは美人のメス猫であった。鼠を捕ると得意気に庭さきで大声で啼いてそれを見せびらかした。少年のぼくは樹にいるセミを見つけると、パチンコで翅を狙って落とし、そいつをクロへあげた。セミも好物だったが、やはり一番は獲れたてのスズメだった。夕方になるとスズメが群がるイチョウの大木があった。石の鳥居に上りそこからイチョウの10メートルを越す大木へ登っていく。その一番上の樹の股に腰を安定させると、パチンコを構えて近くでさえずるスズメたちを狙い撃ちをするのだ。4,5メートルさきの枝に群がるスズメをめがけて小石をパチンコで飛ばす。面白いように命中してスズメは落ちていく。まだ温い小さなスズメを2,3匹、家に持って帰ってクロへやると、嬉し声をあげて食べていた。スズメにはちと悪いが、クロは大喜びだった。発情期になると庭にはオスの猫たちが大勢やってきた。たがいにクロを自分のものにしようとケンカをはじめるのだ。それは壮観なオス同士の戦いだった。クロはそうしたオスたちの競争を何食わぬ顔で眺めている。彼女はそのうちお腹が大きくなってご妊娠となる。初めはぼくの机の一番下の抽斗を空けてそこで子供を産ませていた。いっぺんに5匹も6匹も産むのだ。でもそのうち、お母さんがクロを家から外へ追い出してしまった。土足のクロが家を汚してだめだってそう言うんだ。クロは軒下の箱の中でお産をするようになった。あるときクロが大きな泣き声をだしていた。それはもう狂ったような表情だ。クロの留守にオス猫が赤ちゃんをぜんぶ喰い殺してしまったのだ。なんと残酷なことをする奴らなんだろうか。ぼくが覚えているのは、可愛く育った子猫をお母さんの言いつけで捨てに行くときのことだ。ぼくは大きな原っぱの草叢の中へ、子猫を置き去りにすると後ろも見ないで家へ逃げ帰った。それがいちばん悲しい仕事だった。クロはぼくの顔を横目でチラチラと見ながら、子供を探してそこらじゅうをさがし回るんだ。クロのあんな哀しい泣き声をぼくは二度と聞きたくはなかった。そのうち、クロは歳を取った。暑い夏の日には、毛も抜けた痩せこけたからだを玄関の石の上で横たわらせていた。近づくといやな匂いがした。クロはぼくをみてももうなんの関心も払わなかった。その夏の夕暮、ぼくはクロが近所のお墓の柵を越えて横切っていく姿をみた。それがクロをみたさいごだった。悲しいけれどそれがクロの一生だった。
 内蔵助はオスの血統書つきのアメリカ産の猫。まだ2,3歳というところだ。野良猫なら飼ったことがあるけれど、お店で猫を買って飼うのははじめてのことだ。内蔵助は私の可愛い子猫だ。私もむかしのクロとおなじように歳をとったが、おまえが大きくなるまで、一緒に元気で生きて行こう。12月14日、赤穂浪士の討ち入りの日に、おまえに大石内蔵助と名前をつけたのは、私の老妻なのだからね。
 翌日、亀戸からタクシーで内蔵助を連れて帰った。内蔵助は狭い書斎で飛びまわり、一時もジッとしていることがない。猫との穏やかな晩年を過ごすはずが、とんでもない跳ねっ返りの猫らしいのだ。ヤレヤレ。



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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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