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猫について

 猫を飼って2年ほどが経つ。ペットショップから仔猫を連れてきたのが、生れてそこそこだから、2歳までの猫の成長につき合ってきたことになる。同じ屋根のしたで暮らすことでこれほど間近にペット動物を観察するに相応しい環境はない。先日テレビで飼い主がじゃれつく猫に手足を噛まれる際に、二匹の猫を飼っている場合に比べ、その痛みの強弱がちがうという報道を聞いてなるほどと得心した。噛まれる相手の反応を見ながら噛む力を緩めるのを甘噛みというらしい。二匹の場合はお互いにじゃれ合いながら、自然にこれを覚えていくらしいのだ。だが、一匹だけの猫はこの甘噛みができない。自分が他の猫に噛まれた経験がないから、噛む度合いを加減するということを知らないのだ。我が家では一匹の猫を家につれてきた当初から、手や腕で抱いて可愛がってきた。いまでは成長する猫の狩りの本能の相手をするのは私か妻だけである。これまでどおり猫の相手をしていると、この猫が噛む手足の痛みは相当なものとなっている。二匹なら覚える噛み加減をどうやれば、我が家の猫に教えることができるだろうか。そこで噛まれたときの痛みに応じ、痛いときには痛いという素振りを大袈裟に猫に示すことにした。痛いときには、「痛い!痛い!」と口にだし、素振りで示すとジッとこちらの表情をみている。そのうち次第しだいに噛んでもそこに少しづつある加減が、姿勢の変化が出てきたように思われた。兄弟の猫同志の素早い学習とはほど遠いが、そうやって猫と人間との疎通をはかっていくほかはないのではなかろうか。噛みながらどこか遠慮するようになった。噛んでもすぐにそこを舐めてくれるのだ。こうして言葉でのコミュニケーションができない猫と人間の間でも遅々とした会話がなりたつように思われる。
 「ホモサピサンス全史」という本を薦められた。アフリカに生れた祖先から現在の人間の知能をそなえた文明までを得た人間が今後どうなるかまでを通覧することは多大な関心を惹かれることだ。あらゆる分野の科学と技術工学の進展は、将棋指しの能力のようにいとも簡単にその種の人間の能力を乗り越えるであろう。この半世紀以後に全地球の人口は半減するとの予想もあるくらいだから、大いに進化したAIが人間の代替をしてくれるならこれに越したことはない。さぞ広範な知識を動員しておもしろく書かれているにちがいない。いずれ淋しい人間たちの後ろ姿を横目にAIがこの種の全史を書いてくれるのを期待したい。先日テレビで、仔猫がカラスに襲われ食べられているのを見て、犬がカラスを追い払い猫が一命を取り留めたが片足を失った。その仔猫を助けた犬が猫に乳を飲ませて介護し、一人前に育てている光景をみて思わず心を動かされた。飼い猫にも飼い主の感情をくみ取る繊細な能力をときおりみることがある。尖端を行くホモサピエンスの全史の展開は日々能力の衰退する高齢者をさぞ欣喜させてくれるだろう。本のボルダリングも老体の能力と感性を刺激してくれるのかも知れない。

 さて余談となるが、議論のないところに政治はないとの意見を新聞で読んだ。徹底的な議論を交わす伝統のある英国が選挙でEU離脱を決めたが、土壇場にきてEUとの合意ある離脱をする余裕がない困難に逢着しているようだ。また、隣国の韓国と日本との関係がぎゃくしゃくしている。過去に結んだ協定を正面にだし、国際的な秩序の基本を説いても、余計に相手の感情の痛点を刺激するだけであろう。政治が理性だけで動かないことは、これまでの歴史が教えている。カズオ・イシグロの「日の名残り」という小説は、ヴェルサイル条約に基づくドイツへの莫大な賠償金の要求を緩和しようとした非公式会議を主催した邸の主人ダーリントン卿に使える老執事の回想なのだが、「品格」とはどのようなものかを問うている小説ともいえるだろう。圧倒的な苦境のなかから勢力の伸張をはかってきたものこそが、ヒットラーに象徴されるファシズムというその対極にあったものだからだ。
 八連敗で引退した稀勢の里へのファンの拍手は条理を超えたものであろう。相撲取りを「力士」と呼ぶ日本人のそこはかとない惻隠の情がその姿に引き寄せられるものを感じたからであろう。


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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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