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詩 「フォールン・エンジェル」

    

   フォールン・エンジェル


きみの好きな 堕天使というカクテルを飲んだ
あの古い酒場のバーテンには作れなかったやつさ

きみの瞳の葉の蔭に 黒い花びらのように
落ちていた 天使の羽根

ヴィラ・アドリアーナ
きみの魔法が魅惑する 古代ローマの華麗な宮殿

あのキマイラの幻術が アンティノウスをナイルの岸辺へ誘ったように
この世を統べる物語の神が 長衣静かに曳きずって

きみのこころの回廊を 横切っていく
金色の杖で その大理石の胸に奇怪な呪文刻みながら

ロ-マ・ボルゲーゼ公園の美術館
その窓際に背むけて横たわる ヘルマアフロディーテの像よ

白い背中 なだらかな胸 泉したたる腹部へと
両性具有者の夢が 迷路のように妖し気な襞をまく
 
おお せわしなき鼠の葬列 虚ろな闘技場のなかへ
わたしたちは どこからきてどこへいくのか

ジンの青い焔が グラスの淵煌めかせ
きみの大きな瞳が 祝祭の篝火のように 遠くの森を照らしている




 * 「ハドリアヌス帝の回想」(ユルスナール)から40年の時を超え私の中に甦った詩集「海の賦」の一篇である。



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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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