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新聞を読んで

 4月18日の朝日新聞に掲載された投稿記事「英国の混乱 失政の帰結」は非常に興味ある論点を明瞭に提示したものであります。この記事は英国のEU離脱の現状を簡単に概括し、分析してくれました。英国の政治が他国と比較して優れたものと思っていたものにはある種の衝撃をもって読まずにはいられません。EU離脱に関わる英国政治の混乱を明解に証明する参考意見がみられないことにもどかしさを感じ、明瞭な解説がされないことに不可解な思いを禁じ得ないでおりました。しかしこの投稿記事はそれらの靄の一端を晴らしてくれると共に、これが日本にも無縁でないという結語には共感をおぼえた次第であります。だがしかし、どうも腑に落ちないのは、現在の国際政治の急速な変化と国際情勢の複雑化に遠因があると思われますが、これはまた世界経済の現状についてもいえることでしょう。地球規模によるある種の限界にぶつかっているのでありましょうが、このあたりのことについては哲学者や文学者等の様々な空想と想像を巡らしていることで満足しなければならないのでしょうか。
 それはともかく、話しを英国のいわゆる「ブレジレット」の問題に戻り、寄稿記事を整理してみることにしましょう。
 まず第一に、現状の起点を英国の過去30年間にわたる英国の民主主義の地殻変動の帰結とみています。1980年以降の英国には三つの大きな変貌があったとの指摘であります。
 その第一が政治のイデオロギー化です。それはサッチャー首相がそれまで主に経済問題として妥協を模索してきた欧州統合を政治問題として再定義し、非民主的な官僚組織が支配するEC(欧州共同体)が、硬直的なソ連と同様な時代に逆行する嫌悪すべき対象と見做したことにあります。このことが党内の親欧州派を一掃し、次第に保守党を欧州懐疑派が支配するイデオロギー政党へと変貌させ、一部の議員を経済的な合理性を無視した原理主義的なEUからの離脱を求めるようにさせたとします。これはとても大胆な見解と思われますがいま少しの説明を要するところでしょうか。
 次ぎにその第二が、新自由主義の浸透による経済格差の拡大と中道政治の空洞化に重要性をみています。サッチャー政権からキャメロン政権まで、新自由主義による経済政策の結果、一部の低所得者層は英国社会での「忘れられた人々」になった。そしてブレア等の労働政党に失望した人々は党内左派に希望を寄せ、ここに英国政治は二極化して中道政治の衰退が進んだとします。ここから、生活の困窮の原因がサッチャー政権の政策やグローバル化ではなく、EUによって引き起こされたと考えるポピュリズムが台頭して不満の矛先がEUへとむかったとします。
 第三の重要な構造変化は、政治エリートに対する国民の信頼の失墜です。03年のイラク戦争と08年の世界金融危機により、国民は政府への信頼を失ったのです。イラクには大量破壊兵器はないことが判明し、金融危機での増税によりこの税金の一部が大規模な金融機関へ流れ、エリートは嘘つきで自己利益しか考えないという失望と怒りが広がったと考える。ロンドンのエリートもEUの官僚も信頼できなくなりました。そうした不満が16年6月23日のEU離脱の是非を問う国民投票での選択へと進ませます。もはやEU残留も離脱協定の意義も、その言葉への信を失い、英国政治の危機がまさにここにあるというのです。
 悲劇的なのは離脱により大きな損害をこうむるのが、それを支持した低所得者層であり、信頼を失ったエリート、再選のみ拘る政治指導者たちは進むべき道を失っています。もはや過去の大英帝国はグローバル化と相互依存が進んだ現代世界に甦ることはないのです。
 そして最後に、筆者は日本を含む議会制民主主義国にとって、英国の姿は無関係な問題ではないと釘をさすことを忘れていないのであります。

 以上に整理したリアルポリティカルな投稿記事から、胸の靄が晴れたようであります。所々にいま少し綿密かつ実証的な検証と理論的な考察が必要と思われますが、いま、必要な情報が俯瞰的に語られていることに、好感をもって読んだところであります。筆者は50歳ほどのまだ若手の国際政治学者のようですが、白井聡の「国体論」が国内の理念型の政治論とするなら、これに並行して、こうした国際政治の具体的な鳥瞰が求められているのでないでしょうか。そして最後にまことに勝手な希望ながら、映画「許されざるもの」により西部劇の終焉を迎えたかのアメリカにまた新たな西部劇さながらのビックなドラマが胎まれているようです。そして一帯一路の遠大な世界政治の野心を隠そうとしない中国の国際戦略についても、19世紀末にフランスの詩人にして哲学者のポールヴァレリーによる「方法的制覇」のごとき一文を期待することの是非について、時代錯誤となるのかどうかは私の知らないところなのであります。不一




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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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