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ボクシングという格闘技

 6月19日夜、WBO世界スーパーフライ級王座決定戦で、元世界3階級王者で同級2位の井岡一翔(30)が、同級1位アストン・パリクテ(28)フィリピンに、10回1分46秒TKOで勝利した。ここに井岡は日本初の4階級制覇を達成したのだ。
 この10回戦の試合は実に見応えがあった。特に7回の攻防戦の壮絶に打ち合う互角のシーンはその後の試合の微妙な陰影を見える者には見せていたであろう。残り1分の井岡の戦いに8回以降のすべてをよむことができる。8回は相手の疲労は歴然としてきていた。すでにアストンは井岡を追うことができなくなっていた。そして9回いっそうそれは明瞭となった。大ぶりのアストンのパンチの隙を井岡の的確な上下のパンチが相手のからだの芯を捕らえ、さらにアストンのからだは揺れだしていた。10回にはもうアストンにスピードはなくなっていた。井岡の右ストレートがアストンの顔面を打ち抜いてからの井岡の猛烈なパンチの連打の攻撃は満を持していた井岡の攻めにレフリーの右手が上がったのは早かった。1分46秒、マットに沈まないまでも、レフリーは井岡のテクニカルなパンチの連打に勝利の審判を下したのだ。
 以前にも当ブログで書いたことだが、1対1の勝負ほどその観戦者に明解な結果を見せてくれるものはない。報道によると敗者のアストン・パリクテはレフリーの審判が早いのに不満を漏らしたそうだが、あれ以上の試合の続行は敗者のダメージを増すだけであったろう。観戦の印象では、ゴングが鳴りリングに進むアストンの顔から相手を見下すUglyな笑いが消えたとき、私のこころには井岡勝利の確信が弾けてとんだ。他方、井岡の顔には充溢した緊張の裏に勝利への意欲が漲りつづけていたのだ。目は沈着に相手をみていた。それはやるだけ準備をやり遂げた挑戦者の自信がいぶし銀のごとく勝者の全身を鎧のようにつつみ、また攻撃への雄叫びをたわめてその時を待っていたのだ。元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者で「ノックアウト・ダイナマイト」の異名を持つ内山が、アナウンサーに井岡への注文を問われ、「繊細な攻めを保つこと」とつぶやくのが聞こえた。2016年にジェスレル・コラレスへ再挑戦して判定で負けているからこそ出る内山らしいことばだった。井岡が10回にアストンにノックアウトで勝つとはおおかたの人が予想していなかったことだろう。だがアストンは負け井岡が勝ったのだ。観客の誰の目にもそれは明瞭であった。リーチと身長に優位のアストンのそのパワーは井岡のスマートな技術力に負けたのである。この試合を観て、スポーツについて文芸批評家の小林が書いたこんなことばを思い出していた。「ファンが心の底で、われ知らず求めているものは、人間らしい道義なのではあるまいか。」(「スポーツ」)
 ボクシングも含め格闘技のいい試合をみていると、小林のこの「人間らしい道義」ということばが、はっきりした顔をもって迫ってくるのが確信されるのである。
 海で死んだ元ボクサーがもう一度生れてきたらまたボクサーになりたいと洩らしたそうだ。格闘技のボクシングには尋常な人間には想像できないそうした人間らしい魅力が秘められているのだろう。




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仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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