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詩集「弧塔」「海の賦」「カモメ」から(1)

 女王弧楽

一撃 
 呻吟の立ちこめる迷路より
 非情の甍の上に
おまえ凜然たり静謐の女王よ
樫のように硬い高貴な額には
せりあがる恍惚と不安の王冠を戴き
おまえは眩暈の矜恃を低く
吟じながら
この地上に起立したのだ
いつか蒼穹が
痴呆の笑いをおまえにもたらしたときも
反抗の拳を秘かに固めたおまえは
天使のように微笑んだだけだ
強い憂愁が
衰耗したおまえの軀を
腐り落とそうとしたときも
狂おうしい死の鬼火が
おまえの胸倉を這えあがり
殺害の血を烈しく欲したときも
おお苦悶に満ちた高貴なる女王よ
力と優雅の舞踏よ
鉄軸のおまえの理性は
美の狂宴に酔い痴れながら
夕映えのように美しい嘶きを聴いたのだ
輪郭の競立
     色彩の跳躍
歓喜の王国
女王よおまえはそこにいた
おお 街道の存在
おまえはよろめきながら
「幸福」を見た
疲れた軀を横たえておまえは睡りに落ちた
起きあがっては子供のように夢を追った

暗転する
夢また夢
青春の地獄
女王の影絵は
   身を捩って死に果てる


 ジャコメッティ

広場を横切り
雨の中を駈けぬけ

わたしは 入っていった
祈りのようにか細い腕の建つ
美しい廃墟

そこに おまえは
いた

わたしを みつめるものが
ある

身すくむ 至福の中に
かれのほうへ

歩いていく わたしが・・・・


 朝のねむり

夕べの渚にいでて
おまえ恋したあの日から
風がわたしの眠る追憶の頁をめくり
わが瞼を殺ぐ 棘のような光の雫

おまえ苦しみをもて 受胎する巫女よ
岩に凍みいる 密やかな愛を忍び
あかげらの音絶えし このさびしき林のなかに

おまえの紡ぐ夢中の絲で 真珠母色の空のかたちを彫れ
そして 親しき友等が集う丘の上に
朝霧にぼやけた おまえの曙のレースをひろげてみよう


 カモメ

今朝 輝く海の青は
昨日の 夜の煌めきか
開き放たれた窓からは こうして風がそよいでいく

波が満ち ぼくたちの足跡はきれいに流れ
おまえのからだはいま 海月の骨のように明るくなった
この広い海へそそがれる 葡萄の酒などないものか
すべてをくれ とおまえはいう

おお 無限とは
ぼくたちの貧しい限界を超えていくもの

ごらん 絶え間なく沖にむかって海は毀れ
  カモメは空から離れられないので
  あんなに激しく飛んでいる





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masuryuu

Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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