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ヘメロカリス

 「ヘメロカリス」という百合科の一年草の花は、アメリカでは「デイリリー」と呼ばれ「一日の美」という意味だそうです。
 私はいま夏の風邪のために、「牧野日本植物図鑑」で詳しいことを知る余裕がないのだ残念だが、グーグルで検索すれば、その花の全容を見ることがでる。
「とにかく丈夫で手間いらずなうえに、ユリに似た大きくて美しい花が3週間ほど、毎日何輪か咲き続けます」とのことで、「花は、4倍体品種の大きいものになると径15㎝にもなり、デイリリーといわれるだけあって、草姿からはちょっと想像できないような、きれいな花を咲かせます。花は、葉の間からのびてきた花茎に5~6輪、一度に開花させず、順次開花させていきます。残念ながら、花の寿命は1日限りですが、花茎を何本も伸ばし、次々と咲かせていきますので、比較的長い期間楽しめます。花の色は、白、クリーム、黄色、赤、紫とあり、2色花もあります」とのことですが、ブログの最後にこの花の写真を添えてみました。
 百合の花は六十数歳で亡くなった妻の母の名前が「百合子」であり、そして、また私の直近の姉も一字ちがいますが、「由利子」という偶然のため、テレビでこの 「ヘメロカリス」(Hemerocallis spp)という名前の花が繁殖力の異常強い割に、1日で姿を消すというこの不思議な花の名を記憶に留めていたのでした。
 七つの歳上のこの姉は永いあいだ膠原病を患って抵抗力が弱いところに、数年まえバイクに乗った長女が突然左折したトラックに轢かれてしまい、以来失意のままにに、今度は進行性の肺癌で難渋している最中のである。そのようなおり、NHKの朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」がのっている自転車が、小学校のときやっと買ってもらった私の自転車に似ていることにふと気がつきました。その新しい自転車はちょっとした隙に盗まれてしまい、私は茫然自失の体で家の座敷で泣いていたことがあった。そのとき「どうしたのよ?」と声をかけて、やっと買ってもらった自転車のため母にも告げられない事情を姉に伝えると、さっそく姉は盗難場所ちかくの交番へ連れていってくれたのです。神奈川に住む叔父の家の近くの小学校のグランドで自転車の乗り方を教えてくれたのも姉さんでした。この姉さんが銀行へ就職しましたが、私が大学生の頃、一度だけ渋谷駅前にあった姉の銀行で小遣いを貰ったことがあった。二階から降りてきた姉さんが手にがま口を握っていたのをみた私は「しめしめ」と内心つぶやきましたが、姉さんは嬉しそうに笑いながら、
「しょうがない子ねえー」と声をだし、小遣いをくれたときの光景を、私はいまでも思いだすのです。
 静岡県の掛川にいた頃、そこの寺の一角に疎開生活をして、私はそこで生まれたのですが、そこのお寺の家族と一緒に撮った写真があります。そのとき姉さんは、8歳ぐらいだったと思いますが、その写真では一番まえの列に座って、一人だけ口を半分開けて笑っている姿が、なぜか少年時代から私の印象に残っているのです。
 私は姉さんが働いて買った、緑の箱に入った世界文学全集を、中学・高校の夏休みによく読みました。お陰で、高校時代には、読書感想文のコンクールで、東京都から表彰をされたこともあったのです。
 私はむかし宮沢賢治の詩を読み、思わず胸を突かれたように感動した詩があります。題名は「永訣の朝」といいます。それを書棚から引っ張り出して、読んでみましたら、それは宮沢賢治の妹を詠ったものでした。

      けふのうちに
      とほくへいつてしまふわたしのいもうとよ
      みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
         (あめゆぢゆとてちてけんじゃ)
      うすあかくいつそう陰惨な雲から
      みぞれはぴちょびちょふってくる
         (あめゆぢゆとてちてけんじゃ)
      青いじゅんさいのもようのついた
      これらふたつのかけた陶椀(とうわん)に
      おまえがたべるあめゆきをとらうとして
      わたくしはまがつたてっぽうだまのやうに
      このくらいみぞれのなかに飛びだした
         (あめゆぢゆとてちてけんじゃ)
      蒼鉛(そうえん)いろの暗い雲から
      みぞれはぴちょびちょ沈んでくる
      ああとし子
      死ぬといふいまごろになって
      わたしをいつしやうあかるくするために
      こんなさっぱりした雪のひとわんを
      おまえはわたくしにたのんだのだ
      ありがとうわたしのけなげないもうとよ
      わたくしもまつすぐにすすんでいくから
         (あめゆぢゆとてちてけんじゃ)
      はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
      おまえはわたくしにたのんだのだ
       銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの
      それからおちた雪のさいごのひとわんを・・・・
        

 この長詩はまだ続くのですが、このへんで止めておきます。
宮沢賢治の妹へ寄せる一途な思いが、岩手県訛りのリフレーンを挿入しながら、伝わってくる。それはどこか法華経の信者であった賢治のこころのリズムの響きが遠間に聞こえてくるようだ。
 
 
      これらふたつのかけた陶椀(とうわん)に
      おまえがたべるあめゆきをとらうとして
      わたくしはまがつたてっぽうだまのやうに
      このくらいみぞれのなかに飛びだした

 この連のなかに、賢治の妹への愛情が、文字通り愚直なほど、まっすぐに生きた姿がそのまま比喩となって、いまでも私の胸を撃つのである。



 4-11ヘメロカロリス 上の花「ヘメロカリス」


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Author:masuryuu
仮に「異邦人」としておく。あられもない空想から、科学的「真実」まで、詩、小説、歴史、哲学、政治、経済、趣味等、この世の人事、出来事、万般に、興味を寄せる者の総称とします。

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